秋深まる丹波、昼は秋晴れで20度を超え、反対に夜はぐっと冷え込むこの時期。昼夜の気温差が激しい程ぶどうは甘くなると言われます。
収穫もついに「セミヨン」を残すのみとなりました。もう十分熟しているのになぜ収穫しないのか・・・?
これは「遅摘み」と呼ばれる方法だからです。天候の悪化や野鳥の襲来など、多少のリスクは覚悟の上で果実を敢えて放置し、「超完熟」にまでもっていくのです。通常の糖度よりも5、6度高いぶどうができます。
「カビ!?」いえいえ。これは「ボトリティス・シネレア菌」という特殊な菌で、「貴腐ワイン」という超高級ワインを生み出す貴重な菌です。完熟したぶどうにボトリティス菌が付着すると、菌はぶどうの皮の細胞を壊し、果汁の水分を蒸発させて、ぶどうを少しづつ乾かしていきます。それにより糖分が濃縮され、干しぶどうのような「貴腐ぶどう」になっていくのです。日々甘くなるぶどうに、蜂たちも大喜び。
ところで、甘口ワインの発見をご存知でしょうか?
その舞台はドイツのヨハネスベルグ城。ここのぶどう畑は、やや離れたフルダという町の大僧正の所有でした。毎年秋口になるとぶどうをもった伝令が早馬を走らせ、大僧正に許可証をもらってから収穫するのが恒例でした。しかし1775年の秋、その伝令が帰路の途中、山賊に捕まってしまいます。
なんとか修道院に帰ってきた頃には、ぶどうは完熟どころか腐り始め、カビに覆われて大騒ぎだったのです。こんな葡萄ではろくなワインはできまいと投げやり仕込んだところ、これまでにないすばらしいワインが出来上がったのです。これが貴腐ワインや遅摘みワインの誕生になったのですから、まさに「怪我の功名」。
ところがこの「山賊説」、他にも説があり、実はフルダへの帰路、一休みしていたところに現れた可愛い娘にすっかり心奪われ、彼女のそばから離れられなかったとか・・・。「葡萄の液が樽の中で発酵すると、そこにある全てのものが上に持ち上がるように、ワインは胸の奥底にある秘密を吐き出させる。(モンテーニュ・エッセーより)」さて、真相はいかに・・・。
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2008.10.17 知って驚き!?甘口ワインに潜む「真実」
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